iPhoneでDS [iPhone DS]

■ウェアラブル PC■
 『ウェアラブルPC』。文字どおり、身につける(Wearable)PC だ。たとえば、手首に装着する腕時計コンピュータ。腕時計に、メモ機能などを付加したもので、コンピュータの歴史に一石を投じるかと思われたが、さっぱり売れなかった。必要性がないこと、操作性が悪かったことが災いした。現在、この種の機器は『PDA』と呼ばれているが、『Personal Digital Assistants』の頭文字をとったものだ。一般に、スケジュール、住所録、メモなど簡単な個人情報を管理する携帯端末をさしている。

 PDAの歴史は、1993年のアップル社が開発した『Newton』に始まる。日本では、ほぼ同じ頃発売された『ザウルス』が有名だ。ザウルスは、日本で成功をおさめた最初のPDA かもしれない。一方、『Newton』は、アップルらしい洒落た商品だったが、不発に終わっている。昔、面談した出版社の担当者が大事そうに持っていたが、目撃したのはその一回だけ。『Newton』の仕掛人は、当時アップル社のCEOだったジョン スカリーだ。ペプシコーラの副社長からスカウトされた人物で、アップル現CEOスティーブン ジョブズを解雇した人物としても知られる。彼は、『スカーリー(日本語訳)』という素晴らしい自叙伝を残しているが、今はどうしているのだろう?

 PDA市場で、歴史上初めて成功したのが、Palm Computing社の『Palm』だろう。PDA の代名詞とまで言われたが、日本では売れず、その後、アメリカ本国でも落ち込んだ。やがて、通話に絞った携帯電話が大ブレイクし、モバイル端末の代名詞にまでなった。ところが、携帯電話でインターネット&メールも可能になり、メモ、スケジュール管理まで装備されると、PDA復活の気配が見え始めている。PDAが、コンピュータの歴史の表舞台に、再び登場するかもしれない。

 よく考えてみれば、通話、インターネット&メール、写真・映像・音楽の再生に用途を絞れば、『ウェアラブル コンピュータ』で十分だ。しかも、これらの用途は、パーソナルユースの90%を占めている。何が言いたいか?パーソナルな用途で、高価でかさばるパソコンをわざわざ購入する必要がないということだ。やがて、『専用+ウェアラブル』なコンピュータは、パソコン需要を激減させるだろう。つまり、『ウェアラブル』も次世代コンピューティングの重要なキーワードとなる。

■リーン コンピュータ■
 次世代コンピューティングの最後のキーワードは『リーン(ぜい肉のない)』。これは先の『専用+ウェアラブル』を実現するための技術手法だ。用途が限られた専用機で、身につけるほどコンパクトなら、『ぜい肉』はすべて悪となる。つまり、ハードもソフトも、可能な限りダウンサイジングされる。

 最近、話題の携帯ゲーム機のコンテンツを、1タイトル丸ごと受注した。ところが、開発開始早々、面食らった。PCの感覚でプログラムを書いていくと、メモリ&外部記憶装置(ROM)が、すぐパンクするのだ。携帯ゲーム機は、なにもかもがつつましいが、この著名なゲーム機はそれが特に顕著である。使用中のパソコンに比べ、メモリ容量で 1/250、外部記憶容量で 1/10000!同じ感覚でプログラムを書く方がおかしいのだ。最近、休みがまったく取れなくなったのは、このせいだと思っている。

 携帯ゲーム機用のプログラムを書いていると、自分がこれまでに書いたプログラムが『ステロイド剤によるドーピングコード』に見える。『拡張性を備えた完全無欠のシステム』を御旗に、ムダだらけの肉塊を作ってきたのだ。ということで、今回の携帯ゲーム機のコンテンツ開発で学んだことは3つ。
(1)「大きい」はすべて悪。
(2)データ構造は、正しい動作をすれば良く、拡張性は無用。
(3)シンプルで俊敏なプログラムを心がけるべし。

 言いかえれば、『複雑さより俊敏性』、『機能の多さより正しい動作』、『拡張性よりコンパクトさ』が求められる。さらにくくれば、『シンプル・コンパクト・俊敏』。これが、リーン テクノロジーのキモだ。案外、このテクノロジーは、プログラミングの歴史に一石を投じるかもしれない。最近流行のWebプログラミングのように。

■iPhone/iPod touch + 任天堂DS■
 次世代コンピュータのメインプラットフォームは、パソコンに替わり、『専用+ウェアラブル+リーン』コンピュータになるだろうが、それを形にしたものが、iPhone だ。iPhone の液晶画面は、解像度 320×480 ピクセルもあり、写真はもちろん映像も再生できる。iPod 同様、音楽再生も可能だ。さらに、インターネットブラウザ Safari を搭載しているため、本格的なインターネットサーフィンも楽しめる。むろん、メールも OK だ。日本市場では欠かせないデジカメも備え、当然、通話もできる。

 iPhoneから、デジカメと電話を除いたものが、iPod touch。iPhone は GSM という携帯電話方式を採用しているため、日本では使えない。この広い地球で、第二世代携帯電話で、GSMを採用していないのは日本と韓国のみ。むろん、携帯電話機能のない iPod touch なら、そんな心配も無用だ。iPhone のカリスマに惹かれたユーザーは、iPod touch を喜んで買うかもしれない。それにしても、iPhone & iPod touch は美しい。思わず触れてみたくなるほどだ。さすがはアップル社、かつてブリキにメッキのパソコン全盛の時代、洒落たプラスティックケースで世界を席巻したApple Ⅱを彷彿させる。

 iPhone & iPod touch は、操作性も良さそうだ。中でも、マルチタッチ・スクリーンはゾクゾクする。このスクリーンは、複数の点を同時にタッチしながら操作できる。つまり、2本の指で操作が可能だ。言葉では説明しづらいが、デモ映像を見ると、その素晴らしさが伝わってくる。入力デバイスの歴史上、マウス以来の大発明かもしれない。マルチタッチ・スクリーンは、任天堂もすでに特許出願済みらしく、将来スタンダードになる可能性は極めて高い。また、キーボードには、スクリーンに直接タッチする仮想キーボードを採用し、外見上のデコボコもなくスマートだ。

 iPhone は、『携帯電話+PDA』なので、一応『スマートフォン』のカテゴリに入る。つまり、この手の端末は過去にも存在した。ところが、スマートフォンの名が付いた商品が売れたためしはない。一見便利そうだが、買っても意外に使わないのだ。携帯電話としてはかさばるし、PDA機能は使いにくい。つまり、何もかもが中途半端なのだ。一方、iPhone はこれらスマートフォンの問題を、おおむね解決しているように見える。

 2007年東京ゲームショーが始まった。NHK夜のニュースでは、任天堂DS用ソフトをトップで取り上げ、手軽な実用ソフトという新しい市場が生まれつつある、と伝えていた。脳を鍛えたり、漢字を学んだり、ビジネスマナー、はたまたヨガまで学べる。長いゲーム機の歴史の中では、初めての出来事かもしれない。任天堂DSも、携帯電話、iPhone、iPod touch 同様、分かりやすく、使いやすく、そしてウェアラブルだ。

 東京で通勤時間帯に電車に乗ると、以前は携帯電話一色だったのが、今では、携帯電話派と任天堂DS派が五分と五分。携帯電話もウカウカしていられない。携帯電話が任天堂DSの実用ソフトを取り込むか、DSが携帯電話を取り込むか、いずれにせよ、この2つが次世代コンピューティングの鍵を握っている。むろん、iPhone & iPod touch からは目を離させない。

■次世代コンピューティング■
 コンピュータのパーソナルユース(個人用途)について考えてみよう。その 90 %は、インターネット、メール、映像・写真・音楽の再生、ゲーム&実用ソフト、通話であることは、すでに述べた。ところが、そのほとんどが『iPhone+任天堂DS』ですでに現実となっている。パソコンにとって、極めて危険な状況だ。不吉な未来も見える。iPhone とDSがシームレスに融合すれば、パソコンはパーソナル ユースのほとんど失うからだ。つまり、次世代のパーソナル コンピューティングは、『iPhone+DS』になる。

 ところが、パソコンが存在価値を失うのは、なにもパーソナル ユースの世界だけではない。100台以上のパソコンサーバーを抱える組織では、メインフレームがパソコンに取って代わる可能性もある。発熱、電力消費、メンテナンスで、メインフレーム(大型汎用機)が、優位に立つからだ。さらに、サーバーでは、WORDやEXCELが動く必要がないため、OSがWindows である必要はない。現在、この地球上で、100台以上のサーバーを抱える組織は意外に多い。パソコンが安泰なのは、オフィスの机の上ぐらいだろう。結局、パソコンは、パーソナルなコンピュータでも、何でもこなせる汎用コンピュータでもなくなる。つまり、今のパソコンは進化を終え消滅する

 コンピュータ ゲームの世界でも、大変動が起こっている。少し前、RPG世界の覇者『ドラクエ』の最新作が、任天堂DSでリリースされると発表された。これには、正直、驚いた。日本最強のパブリッシャーの、十八番(おはこ)ゲームの最新作が、Wii でも XBox でも プレステ3 でもなく、DSで発売・・・ゲームの世界でも、メイン プラットフォームが『ウェアラブル+リーン』にシフトしていることがわかる。

■大作ゲームの行く末■
 一方、映画なみの開発費をかけた大がかりな 3Dゲームを好むマニアたちは、ゲームは二極化し、大作も生き残ると信じている。つまり、Wii、XBox360、プレステ3 の世界だ。自分自身もこの手のゲームが好きなので、同調したいところだが、不吉な予感もしている。知人が所属するゲーム会社では、プレステ3 の場合、グラフィック デザイナーだけで、1タイトル200 人も投入しているという。開発期間が1年として、
200人×12ヶ月×80万円=19億2000万円
絵を描いただけで、19億円が吹き飛ぶ。この中には、プロデューサー、ディレクター、プログラマー、サウンドクリエーター、パブリシティ(宣伝広告)費用、デスクで暇つぶししている重役たちの取り分は入っていない。

 これだけの大枚をはたいて、仮に、1本6000円で50万本売れたとする。すると、
6000円×50万本=30億円
仮に、パブリッシャーの取り分が半分とすれば、15億円がフトコロに入ることになる。つまり、大作の場合、50万本売れても、黒字になるかどうか怪しい。そもそも、50万本売れるゲームソフトなど滅多にない。この適当な計算が意味するところはたった一つ、
「大作は宝くじ」
である。つまり、パブリッシャーは、売上げ数字が読める続編しか創らなくなる。いや、創れなくなるのだ。この地球世界が資本主義である限り、この予言は現実となる。

 昔から、ゲームの世界には、
「ゲームビジネスの勝敗を決めるのは、ハードの性能ではない」
という歴史的不文律がある。何をいまさら、なのだが、次世代ゲーム機戦争では、それがさらに真実みをおびている。プレステ3は、Wii、XBox360 などライバル機にくらべ、画面をスムースかつリアルに見せる能力において、一頭抜きん出る。ところが、今もっとも美しいと感じるゲームは、任天堂のマリオギャラクシー。任天堂が Wii 用に開発中のビッグタイトルだ。ハードスペックに頼らず、絵を描くセンスとスキルだけで、あんな素晴らしい絵が創れるとは・・・任天堂のグラフィック チームには脱帽だ。プレステ3 危うし・・・

■カウントダウン■
 すでに、モバイル機器の売上高が、パソコンの売上高を超えたという情報がある。あらゆる端末を含んでの結果だろうが、単価を考えれば、とても信じられない。身体に直接埋め込むインプラント ウェアラブル コンピュータは、さすがにまだ先だろうが、既に、モバイルコンピュータは優位に立っているのだ。かつて、メインフレーム(大型汎用機)を駆逐し、ミニコン、ワークステーションまでも破滅させた無敵のパソコンは、今、存亡の縁に立っている。誰に話しても信じてもらえないこの予言、カウントダウンはすでに始まっているのだ。



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